東近江がん診療セミナー

 

第75回東近江がん診療セミナー

令和6年12月5日(木)17:30? 


 12月のがんセミナーは、第1部『薬剤性肺障害』と、第2部『身寄りのない肺がん患者への退院支援』の内容で開催しました。
 『薬剤性肺障害』とは、薬剤投与中に起きた呼吸器系の障害のことで、典型的なものに、肺の肺胞や間質領域に白い影を認める肺炎があります。その原因となる薬剤の過半数が抗がん剤で、リウマチ薬や漢方薬がそれに続きます。抗がん剤の種類によっても頻度に差があるものの、おおよそ5?10%の頻度で薬剤性肺障害が起こるといいます。ただ、薬剤性肺障害の診断は難しく、原因薬剤の接種歴、薬剤に起因する臨床病型がある、他の原因疾患が否定される、薬剤の中止により病態が改善する、再投与により増悪する、これらすべての項目を満たすのはほぼ不可能で、状況証拠の積み重ねにより、総合的に判断します。治療としては、被疑薬を中止し経過を観察しますが、抗がん剤が原因だと考えられる場合は、休薬せねばならず、がんの進行と治療の間で患者さんにとっても、医療者にとっても悩ましい障害です。
 第2部では今後ますます増えていくであろう独居世帯の退院支援のあり方を問う事例が紹介されました。症例は70歳代の肺癌男性で、食道狭窄で経口摂取困難、胃ろう、在宅酸素療法など、退院するにはたくさんの課題があるうえに、自宅の生活環境や社会的な課題もある患者さんです。患者さん自身も自宅に帰りたい気持ちと、全部自分でできるのかといった不安からこのまま入院していたいという気持ちが入り混じり、弱音を吐いたり、前向きな気持ちになったりの繰り返しに、看護師や多職種がどう向き合ったのかが発表されました。超高齢社会に入っていく日本で、Webで参加されていた開業医さんからは、ターミナル期からではなく、早くからかかりつけ医との関係をもち、地域で支えていくことが必要だとコメントがありました。
  
 次回『第76回東近江がん診療セミナー』は、2025/2/6(木)17:30?開催予定(内容未定)です。
★がんセミナーは会場とZoomの併用で開催。Zoom参加をご希望の方は、東近江総合医療センター地域医療連携室(E-mail:402-chikirenkei@mail.hosp.go.jp)までメールをお願いします。

呼吸器内科医長 和田先生

第1部講演

消化器内科医長 神田先生

第1部座長
 

加藤看護師

 第2部講演

竹内看護師長 

 第2部座長

第74回東近江がん診療セミナー

令和6年11月7日(木)17:30? 


 11月のがんセミナーは、第1部『膀胱がんの治療について』と、第2部『痛いっ!の種類は??なに?』の内容で開催しました。
 第1部の膀胱がんの治療では、診断方法からステージの分類、ステージに応じた治療の選択など、系統的に膀胱がんの“いろは”を説明していただきました。がんの手術方法のひとつで、進行の程度を調べる検査でもあるTURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)は、全身麻酔または腰椎麻酔をしながら、尿道からがんを切除するための電気メスがついた内視鏡を挿入して切除するもので、切除した組織を顕微鏡で調べることにより、がんの深達度や性質などについて正確な病理診断を行うことができるため、ほぼすべての膀胱がんで行います。(国立がん研究センターHPより)
 膀胱がんに限らず、がんと診断された時から、つらさや痛みを感じる時には緩和ケアを受けながら治療を進めていくことが推奨されていますが、第2部では緩和ケア認定看護師の宮城さんから、痛みの種類による対応についてお話いただきました。
 痛みには、がん自体による痛み(浸潤?転移)、がんの治療による痛み(手術?放射線?化学療法による末梢神経障害や口内炎など)、がんに関連した痛み(便秘?褥瘡?リンパ浮腫など)のほか、がんと関連のない痛み(変形性関節症?関節炎?筋筋膜性疼痛など)に分けられます。患者さんの「腰が痛い」や「からだがだるい」「眠れない」といった訴えに対し、その原因を何かを考え、痛みの原因の評価と起こっている痛みの評価をこまめに行うことが大事で、その原因が食事に関することなら栄養士、お薬に関することであれば薬剤師、日常生活に関することであればリハビリ、不安や不眠に関することであれば精神科医といった多職種と連携して患者さんを支えていくことも痛みを和らげるとお話いただきました。
  
 次回『第75回東近江がん診療セミナー』は、12/5(木)17:30?開催予定(薬剤性肺障害?身寄りのない肺がん患者への退院支援)です。
★がんセミナーは会場とZoomの併用で開催。Zoom参加をご希望の方は、東近江総合医療センター地域医療連携室(E-mail:402-chikirenkei@mail.hosp.go.jp)までメールをお願いします。

泌尿器科医師川井先生

第1部講演

泌尿器科医長坂野先生

座長
 

宮城副看護師長

 第2部講演

会場の様子 

 きらめきホール

第73回東近江がん診療セミナー

令和6年10月3日(木)17:30? 


 10月のがんセミナーは、第1部『ターミナル期にある壮年期のがん患者の自宅で過ごしたい思いを支援した一例』と、第2部『臨床倫理入門』の内容で開催しました。
 第1部では、がん末期にある患者さんの希望を、どこまで支援できるかを取り上げた症例です。自宅療養の希望が強く、とにかく家に帰りたいと患者さんと、なにかあった場合を心配する家族の思い。その両方の思いに寄り添いながら、可能な範囲で、本人の希望を叶えてあげたい医療者が、緩和ケアチーム、薬剤部、地域医療連携室と情報共有しながら自宅への一時帰宅を支援。前例がない中で、院内の関係部署と相談を重ねながら、一時帰宅が実現できたことは、患者さんやご家族から感謝の言葉をいただくと共に、私たち医療者にとっても“ケア”とはなにかを考える機会となる発表でした。
 第2部は「臨床倫理入門」という少し難しいテーマです。私たちが医療を提供する際、患者さんが治療を拒否するケース、患者さんやご家族が適応のない治療を望むケース等、医療を受ける患者さんやご家族、または医療スタッフ間においても、それぞれの価値観や価値判断の違いから生じる様々な倫理的課題に遭遇します。医師は生物学的な情報、医学的に最善の治療について話をし、患者は物語的な情報、本人の価値観など、会話のキャッチボールを重ねていくことで、患者?家族、医療者が治療?ケアに納得し、患者に最善の利益がもたらされることが理想だといいます。第1部の講演でもありましたように、患者さんの思いと“適切な”医療の間にある溝を埋めるにはどうあるべきなのかは、大変難しい問題であり、問い続けなければいけないと感じました。
  
 次回『第74回東近江がん診療セミナー』は、11/7(木)17:30?開催予定(膀胱がん?緩和ケア)です。
★がんセミナーは会場とZoomの併用で開催。Zoom参加をご希望の方は、東近江総合医療センター地域医療連携室(E-mail:402-chikirenkei@mail.hosp.go.jp)までメールをお願いします。

立石副看護師長

第1部講演

地域医南6病棟中島看護師長

第1部座長
 

杉本内科診療部長

 第2部講演

手術室青木看護師長 

 第2部座長

第72回東近江がん診療セミナー

令和6年7月4日(木)17:30? 


 7月のがんセミナーは、第1部『消化管ストーマ造設術とその関連疾患』と、第2部『ストーマ外来を通して?オストメイトが安心して暮らせるために?』の内容で開催しました。
 第1部では、寺田外科医長より消化管ストーマの種類、消化管ストーマ造設術の適応疾患、ストーマ関連合併症についてお話がありました。
 ストーマの造設にあったっては、永久的ストーマか一時的ストーマか(期間による分類)、結腸ストーマか小腸ストーマか(造設臓器による分類)、単孔式ストーマか双孔式ストーマかの「形態による分類」があり、目的は排泄物の通り道を造るためだけでなく、腸管や肛門の安静を保つために一時的に造設することもあり、この疾患だったらこのストーマということではなく、症例一人ひとりに対して検討しながら決定していくそうです。ストーマの種類から術式、合併症から閉鎖基準まで、ストーマに関することを網羅的に説明していただき、とてもわかりやすい講演でした。
 第2部では、続宗皮膚?排泄ケア認定看護師によるオストメイト(様々な病気や事故などにより、おなかに排泄のための「ストーマ(人工肛門?人工膀胱)」を造設した人)が安心して暮らせるよう、対処方法や当院の取り組みについてお話がありました。
 講演では、ストーマの造設により、これまでの生活とは違った排泄を余儀なくされた患者さんを対象としたアンケート 「ストーマ管理で困った経験」(NPO法人:SIUPストーマ保有者困った経験の実態調査報告書2020)が紹介され、ストーマの袋がふくらむ、皮膚がただれる、においが気になる、便や尿が漏れる、といったお困りごとに対し、その不安を解消するための市販品の紹介や自治体の補助について説明がありました。また、退院された患者さんへのフォローとして、ストーマ外来の開設や訪問看護ステーションとの連携?訪問など、当院の活動について院内外にアピールを行いました。また最後には、患者さん自身の高齢化や抗がん剤の副作用によって、セルフケアが難しいオストメイトが増えていきている社会的背景についても示唆されました。
  
 次回『第73回東近江がん診療セミナー』は、10/3(木)17:30?開催予定(内容未定)です。
★がんセミナーは会場とZoomの併用で開催。Zoom参加をご希望の方は、東近江総合医療センター地域医療連携室(E-mail:402-chikirenkei@mail.hosp.go.jp)までメールをお願いします。

寺田外科医長

第1部講演

地域医療連携室吉田師長

第2部座長
 

続宗皮膚?排泄ケア認定看護師

 第2部講演
 

 

 会場の様子

第71回東近江がん診療セミナー

令和6年6月6日(木)17:30? 


 6月のがんセミナーは、第1部『肺癌化学療法の副作用対策?免疫チェックポイント阻害剤を中心に?』、第2部『がん化学療法の副作用に関する指導?退院後の生活を見据えて?』の内容で開催しました。
 肺癌の化学療法で使用される薬剤のひとつ、免疫チェックポイント阻害薬には、がん細胞が免疫細胞にかけているブレーキを解除し、免疫細胞の攻撃力を回復させるため、免疫が強くなりすぎることによって副作用が現れる可能性があります。この免疫に関する副作用は、皮膚、消化管、肝臓、肺、甲状腺などのホルモン産生臓器でよく見られますが、腎臓や神経、筋肉、眼にも現れることが報告されており、全身のどこにでも副作用が生じる可能性があります。(日本肺癌学会編:患者さんのための肺がんガイドブック2019年より)講演では「irAE肺臓炎」と「サイトカイン放出症候群」を発症した症例から、副作用に対処した事例が発表されました。
 最後には「肺癌化学療法では、今や免疫チェックポイント阻害薬がキードラッグとなっているが、副作用は自覚症状が発熱や倦怠感など非特異的であっても重篤化する場合があり、早期治療介入が重要となるため、対応に習熟する必要がある」と締めくくられました。
 免疫チェックポイント阻害薬では数週間、数ヶ月経過してから副作用が起こることも報告されており、第2部では、退院後、患者さんが安心した生活を送れるように、南5病棟の取り組みである「パンフレットの見直し」について報告がありました。退院する患者さんに、製薬会社のパンフレットに加え、『化学療法を受けられる患者さまとご家族の方へ』という院内オリジナルのパンフレットを見直すことにより、患者さん自身の理解を深めるとともに、経験の浅い看護師でも一定水準の患者指導が可能になったというアンケート結果が発表されました。
  
 次回『第72回東近江がん診療セミナー』は、7/4(木)17:30?開催予定(ストーマ関連)です。
★がんセミナーは会場とZoomの併用で開催。Zoom参加をご希望の方は、東近江総合医療センター地域医療連携室(E-mail:402-chikirenkei@mail.hosp.go.jp)までメールをお願いします。

尾崎外科診療部長

第1部座長

赤澤呼吸器外科医師

第1部講演
 

松田看護師長

 第2部座長
 

伊藤副看護師長

 第2部講演

第70回東近江がん診療セミナー+第84回ひがしおうみ☆栄養塾

令和6年5月16日(木)17:30? 


 毎年恒例、年に1回の栄養塾とのコラボ企画の今回は、原点に帰る意味で『栄養とがん』と題して、昨年4月より東近江総合医療センターに赴任された外科の山口 剛先生に講演していただきました。
 講演の内容は大きく分けて「がんと栄養」と「肥満とがん」。前半の「がんと栄養」では、がん悪液質やがん患者さんに適した栄養評価方法、食べられない患者さんの栄養摂取の選択等について、Q&A方式でわかりやすく説明がありました。
 後半の「肥満とがん」では、肥満がさまざまな病気を引き起こす原因であると同時に、がんの罹患率もあげる可能性があることを世界のデータ、アジア太平洋地域のデータ、日本のデータで示唆されました。このリスクを低減させるひとつの方法として、先生のご専門である高度肥満症に対する外科的治療について、その効果や術式、保険適応となる条件などが紹介されました。一般的にはまだ馴染みのない肥満外科?糖尿病外科手術ですが、世界では2016年までに685,874件行われており、その普及が課題のひとつであると感じました。
  
 次回『第71回東近江がん診療セミナー』は、6/6(木)17:30?開催予定(肺癌化学療法の副作用対策)です。
★がんセミナーは会場とZoomの併用で開催。Zoom参加をご希望の方は、東近江総合医療センター地域医療連携室(E-mail:402-chikirenkei@mail.hosp.go.jp)までメールをお願いします。

伊藤消化器内科医長

総合司会

山口外科医長

講演
 

きらめきホール

 会場